VISION
好循環型の地域活性化を目指して
カギとなるのは、
地域への「愛着・愛情・誇り」
燕舎では、「好循環型の地域活性化」を目指しています。
(▶︎地域活性化って、何のため?誰のため?)
これは、1.地域への「愛着・愛情・誇り」をきっかけに、2.人々が自ら積極的に様々な地域活動に取り組む、3.その取り組みによって地域に活気が生まれ、4.その結果、地域の魅力が向上する。そして、その魅力を認められたり、実感することで、地域への想いがより一層強くなり、地域活動がさらに促進されていくという循環を指します。
地域活動としての事業:燕舎
まずは、修善寺に愛着・愛情・誇りを持つ自分自身が動いてみることから始めようと、地域密着型のデザインスタジオとして「燕舎」を立ち上げました。
地域の未来を共に考え、地域を共に創る
「好循環型の地域活性化」は、住民の地域への「愛着・愛情・誇り」という気持ち、そして、住民による自主的な地域活動が欠かせません。
地域の活性化は、ごく一部の事業者や住民の力だけではなし得ないものであり、孤軍奮闘ではあまりにも心細いです。実際に、志高くはじめたものの、立ち消えていってしまった様々な取り組みは少なくありません。
それぞれの価値観の違いはあれど、「この地域を消滅させたくない」という気持ちが一緒であれば、足並みを揃えていくことはできるのではないかなと思います。
修善寺を修善寺たらしめているのは、そこに住まい暮らす・暮らしてきた人々の存在や、これまで積み重ねてきた歴史、昔ながらの建築物、自然豊かな環境などだと思います。
それらを含む、いわゆる「土地の文脈」を大切にしていきたいと考えています。それらを無視した強行突破の開発ではなく、どの方向を目指していくのかを共に考え、そして、共に創るような、未来に向けた地域づくりをしていきたいです。
何より、“地域の未来を共に考え、地域を共に創る”その「過程」が、将来的に、とても大きな地域の財産になるという確信を持っています。
何度も耳にしてきた「昔は良かった」の言葉が、「今もいいね」になるように。着眼大局・着手小局で、長く事業を続けていきたいです。
まずは土台づくりから
地域内には、そもそも地域の活性化に関心がない、何かしたいけどどうしたら良いのかわからないと思っている人も多く、そもそも“地域の活性化を共に考え、地域を共に作る”に向けての土台が整っていません。
また、短期間で結果が目に見えて得られるものでもないことから、これまで土台づくりへの尽力もされてこなかったように感じています。
まずは、地域の人々が「地域活性化の本質への理解を深める」こと、そして、協働へ向けての「土台をつくる」ことが最優先だと考えました。そこで、現在、地域の事業者や住民に声をかけて「地域を語る」機会を積極的に設けています。
地域活性化のそもそもの話
Q.地域活性化って、何のため?誰のため?
A.地域の存続のため、地域住民のため
地域活性化の目的の一つには、“地方の経済の縮小に伴う多様な弊害を防ぎ、その地域に住まい働く人々の暮らしを守り引き継ぐこで、より良い暮らしを実現する”というものがあります。
多様な弊害とは、例えば、わたしたちが日常生活を送るためのスーパーがなくなる、生活支援を含む行政のサービスが廃止又は有料化されるなどのことを指します。つまり、どんどん「暮らしにくい地域」になってしまうのです。
その結果、さらなる人口流出を招くという負の循環から抜け出せず、その先にあるのは地域の「消滅」です。
修善寺を含む伊豆市は、既に「消滅可能性都市*」に分類されており、近い将来、消滅の危機にさらされています。
この古き良き温泉街を未来に引き継ぐため、現在・未来の住民がこの地域に永く良く暮らすために、地域の活性化は欠かせないものなのです。
地域の消滅を防ぐためにも、今、何かしらの行動が求められています。
燕舎が地域活性化に取り組むのは、温泉街のあるこの修善寺が好きで、この地域に永くより良く暮らしたいという強い想いがあるからです。
*消滅可能性都市とは:
人口流出・少子化が進み、存続できなくなるおそれがある自治体を指します。民間の有識者らでつくる日本創成会議(座長・増田寛也氏)が2014年に指摘したもので、厳密な定義は「2010年から2040年にかけて、20 ~39歳の若年女性人口が 5 割以下に減少する市区町村」となります。(出典:おしえて!アミタさん-消滅可能性都市とは?極点社会とはなんですか?)
STORY
燕舎をはじめるまでのおはなし
2017年8月21日、燕舎はオープンしました。
修善寺は、県内有数の温泉街として古くから知られています。しかし、進む高齢化で徐々にシャッターが閉じたままの商店や空き家は増え、観光客は緩やかに減少を続けてきました。平成になってからの約20年だけでも4割も減少しています。
私は、その衰退ぶりを肌で感じながら修善寺で育ちました。そして多くの同級生たちと同じく、大学進学を機にこの土地を離れました。
学部2年次からの約1年間は、修善寺の旅館組合と一緒に若年層に向けたPR企画「恋の橋巡り」に取り組み、地域とは繋がりを持ち続けていました。
2017年、学部4年次の6月。週末に帰省した際に、日枝神社横のお店が閉店しているのを目にしました。あぁここもかと寂しく感じつつ、何か自分にできることはないかという思いから、ふと「お店、やってみようかな」と口にしたところ、トントン拍子で話が進み…その週末に賃貸契約を結ぶことになりました。
就職活動の真っ只中、帰省の直前には都内の会社にエントリーをした直後のことでしたが、「地域デザイン」には以前から関心があり、希望の会社に受かるとも限らないし、こんな働き方も良いかもしれないな、まずはちょっとやってみようかと最初の一歩を踏み出しました。
その後、事業計画やグラフィックツールなどのデザイン制作に着手。ゼミの教授からの勧めで一環の取り組みを卒業制作として進め、約2ヶ月間の準備期間を経て開業しました。ひっそりと始めたのですが、地元の同級生やご近所さんたちが沢山お祝いの言葉と応援の声をかけてくださり、とても嬉しかったのを覚えています。
エントリーした会社はというと、開業準備を進めながらそしてオープンを跨いで試験や面接が続き、程なくして、嬉しいことに内定の通知が届きました。
希望していた会社で働いてみたいという思いはもちろん強くありました。また、将来的に地域で仕事をするにしても、一通りの社会経験を積んだ方がいいんじゃないか、そもそも今の自分では力不足ではないかと不安も多く、気持ちの揺れる日が続きました。
沢山悩みましたが、地域の未来にとっては1年でも早く行動するのが良いのではないかという思いと、家族や友人、大学の先生たち、地域の事業者や応援の声をかけてくれた方々の後押しもあり、最終的には卒業後も事業を続けることに決めました。
そして、十分とは言えないかもしれないけれど、これまで自分が学んできた知識や技術で地域に貢献できることをひとつずつやろう、まずは1年頑張ろう、もう1年、もう1年と続けてきました。
悩んだ末に決めた道でしたが、自分の生まれ育った地域で、自分のことを小さな頃から知っている方々や地元を訪れる観光客の方からの反応を直接受け取れる今の仕事を気に入っています。また、自然豊かな修善寺でのゆったりとした暮らしもとても好きです。日々、この道を選んでよかったと感じています。
私は自分の生まれ育ったこの土地は、魅力あふれる土地であり、まだまだ沢山の可能性があると思っています。
しかし、修善寺は何もなくてつまらない場所だと思っているような子どもたちは少なくありません。また、高齢の方々を中心に、かつての人で溢れかえっていた様子を知っているがために、未来に悲観的な方も多いのも現状です。
地域の人々が気づいていない魅力や可能性をみえるようにカタチにして伝えていくことが、地域への愛着や愛情、誇りを育んでいくことに繋がり、そしてそのそれぞれの想いが形成されていてこそ、地域の活性化があるのだと考えています。
まずは、地域住民が幸せに楽しく暮らし、観光に訪れる人々がそれを感じられるような地域を目指して、小さくゆっくりと歩みを進めています。
PROFILE
好きなこと:
文通/旅行/読書/映画鑑賞/住宅展示場巡り/
美味しいものを食べること
デザインや地域づくり関連の書籍やレポート、コラム、インタビューなどの個人的なアーカイブ。
修善寺の温泉街から徒歩15分ほどの実家で、家族と一緒に暮らしています。
両親が日本刺繍と江戸友禅職人で、祖父が歯科技工士だったため、幼少期からものづくりは身近な存在でした。しかし、もっぱら眺めているだけで、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。
高校時代も、デザインへの関心はなく、英語を活かせる分野への進学を考えていました。私の住む伊豆市は姉妹都市交流でカナダのネルソン市と関係があり、我が家ではホストファミリーとして外国からの学生を毎年受け入れていたので、自然と英語が好きになり、同時に得意科目でもあったからです。
高校3年生の春、ある日の夕方、何の気なしつにけていたテレビで、世界で活躍するデザイナーとして宇田川信学さんが特集されていました。デザインによって人々の行動を意図的に変え、犯罪発生率を大きく抑えることに成功したNYの地下鉄車両「R142A」の事例を見て、デザインの持つ力に大きな衝撃を受けました。同時に、論理的な思考を積み重ねていくデザインのプロセスに強く惹かれました。(宇田川信学氏 インタビュー記事 |HEAPS – 日本人デザイナーが挑む、NY地下鉄の新しいカタチ)
この番組で、「デザイン」に出会ったことをきっかけに、自分の中に進路の新しい選択肢が生まれました。
翌日、高校の図書室でデザインの本を探してみると、山中俊二さんの『デザインの骨格』という本が1冊だけ見つかりました。その本にはSuicaの開発話を始めとする様々なデザインの事例や、ものの見方、考え方が優しい言葉で紹介されていました。深く、広く、論理的で感性的なデザインの世界に触れ、なんて魅力的で面白い世界なんだろうと夢中になって読んだのを覚えています。
身の回りには自然物よりも人工物が多いので、よくよく考えれば全て誰かしらの手によってデザインされています。どんな意図が込められているのか、どんな経緯でつくられているのか、そんなことを想像するようになると、なんでもない日常の風景も面白く感じられるようになりました。
もっとデザインについて知りたいという思いから、デザイナーになるためではなくデザインというものを学ぶために、大学ではデザインを専攻しようと決めました。
元々学ぶことが好きなので、プロダクトデザインを専攻しながら、さまざまなデザイン領域や基礎となるデザインフィロソフィーなど広く学びつつ、文学や、演劇文化論、現代美術など、デザイン以外の科目も興味の赴くままに履修していました。
高校生の頃は、自分の生まれ育った地域でお店を持ちながら、デザインの仕事をするようになるとは微塵も思っていなかったので、いまだに不思議な気持ちで仕事をしています
ACTIVITIES & AWARDS
2017年
・修善寺燕舎開業
2018年
・静岡文化芸術大学 卒業制作 奨励賞受賞
・知事公聴会 登壇(8月7日)
2019年
・静岡県主催「地域のお店」デザイン表彰 特別賞受賞
・さんしん夢企業大賞 創業部門 最優秀賞受賞
・TEDx Hamamatsu 登壇
「もしあなたもデザインを学んだら」
・西遠女子学園 女性教育講演会
「『わからない』と向き合い、自分自身をデザインする」
(学園長先生のブログ内 紹介記事)
・KURURA デザイン講座(市内小中学生対象)
・NPO法人コトコト企画室 発足
・レンタルスペース 「most8092」開業